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■ 自動制御の話【1】 進む制御システムのディジタル化




1.はじめに.

近年,半導体技術の発達に伴い,自動制御装置の分野にもその技術が活かされディジタル 化の方向に進んでおります.
その大きな理由は,コストパフォーマンスと柔軟性にあり,プログラムにより種々の制御アル ゴリズムを実現できるばかりでなく,アナログ制御装置では不可能だったパラメータなどの 数値の記憶機能を持ち高精度な演算処理ができ,更に一台のアナログ制御装置と同程度 のコスト又はそれ以下で実現できるからです.しかし演算処理時間の短縮など,まだまだ解 決しなければならない問題が多くディジタル制御装置の多くは液面制御や温度制御などの 比較的時定数の大きなプロセス制御系に活用されているのが現状です.
そうした状況の中で油圧サーボ系や磁気軸受け,あるいはリニアモータなどの磁気浮上系 では,そのサンプリング周期が数十μsec〜数msecというように,高速であることが要求さ れております.


2.フィードバック制御におけるアナログ処理,ディジタル処理の概念.

技術は,思うように何かを支配するという目的で進歩して来ました.その技術の本質は制御 であり,さらに自動制御へと発展しオートメーションによる量産化,省エネ,省力化またパワ ーエレクトロニクスやメカトロニクスなどの分野においても更に高度な制御技術が要望され ております.
図1.手動制御(自動車の制御)の例


【図1】は手動制御(自動車の制御)の例であり,人間は目的を達成するために,ハンドル, アクセル,ブレーキ等を操作し,車の進行方向や速度を制御します.すなわち目的に適合し ているかどうか測定(検出),比較,判断,修正を行いながら車を運転し目的地まで移動さ せます.点線の経路はフィードフォワードと呼び,外乱(制御系の動作を乱そうとする外部の 作用)の情報により,その影響が制御系に現れる前に人間は必要な修正動作を行うもの で,即応性が良くなる理由から自動制御においても,この方式を取り入れる場合が多くなっ ております.自動制御では,検出,比較,判断,修正動作を全て制御装置により自動的に 行います.その例を【図2】室温の自動制御に示します.



このように,自動制御ではループの中には人間は介在しておらず,ただ目標値(希望する室 温)の設定を行うだけで良いのです.これをフィードバック制御といい一般に自動制御の多く は,これを指します.その動作の基本は,フィードバックにより外乱を抑制し,制御量(制御 された結果)を目標値と比較し一致させるように修正動作を行う制御であり,人間と同様な 判断力を持ち,修正動作を行えることが要求されますが,極めて高度な制御系において は,人間では不可能な制御をコンピュータを有効に活用して行っております.
さて,電動機のような制御対象は電磁気現象や回転体の機械的運動といった,きわめて速 い動きをもっております.このためコンピュータの演算処理時間が問題になります.それを 短縮するためにハードウェアの演算素子を採用した制御装置もあります.
今日では自動制御にパーソナルコンピュータを活用する場合も多くなって来ております.
ところでアナログ制御装置による,演算処理は瞬時に行われますが,ディジタル演算処理 の場合は,演算に時間がかかる為,信号伝達に純粋な時間遅れが生じます.これを『むだ 時間』として処理します.この関係を【図3】に示します.



(a)では,入ってきた信号p(t)はただちに演算処理が行われます.そして,q(t)=f{p (t)}なる信号が出力されます.f はある入出力関数を表わす).
(b)では,わかりやすくするためにディジタル制御装置が演算処理に要する時間(演算処理 時間)と,サンプリング周期Tとを,同じものとして表しております.
p(kT)という信号を受けてからT時間経過後に,f{p(kT)}なる信号を出力することが可 能なので、t=kTで出力できる最も新しい信号は,1サンプリング前に入力した、p(k−1 T)に対する,f{p(k−1T)}という信号になります.
(c)はこれを表現したものですが,これは制御系を設計するときの便宜的な表現ですから, (b)で理解して頂ければ十分です.
実際は演算処理時間=サンプリング周期とすることは,ほとんどありませんが,このように 考えたほうがディジタル処理について理解しやすいと思います.
次にアナログ制御装置とディジタル制御装置の特徴を簡単に述べます.

1)アナログ制御装置の特徴

(長所) (短所)
○ 演算処理に要する時間は,ほとん
ど必要としない.
○ 入出力信号が時間的に連続である
ので分解能が優れている.
○ 制御装置は電子回路,油圧,空気
圧などのハードウェアで構成されてお
り,制御アルゴリズムの変更は不可能
に近い.
○ 信号は電圧等の物理量で処理され
るので,精度や再現性が悪い.

2)ディジタル制御装置の特徴

(長所) (短所)
○ 前述したようにプログラムにより制
御装置の構造を作成および変更できる
という柔軟性がある.
○ 記憶能力を持っているのでデータ
の保存や数値制御(NC)等の制御動
作を行わせる事ができる.
○ 信号は数値として扱われるので,
精度が要求される複雑な制御アルゴリ
ズムを実現できる.
○ 時分割動作により複数の制御対象
を制御する事ができるのでコストパフォ
ーマンスが優れている.
○ 演算処理に時間がかかる為,時定
数が極めて小さな制御対象には適用で
きない.
○ 信号は時間的に離散化され,A/
D変換およびD/A変換による量子化
誤差により分解能がわるい.

ディジタル制御装置の分解能を良くするにはA/D,D/A変換器にビット長の長い素子を 採用しなければなりませんが,コストとの問題もあり,どの位の長さが良いかということは制 御対象の性質に依存されます.それはモータの様な安定な制御対象(たとえば入力をステッ プ状に変化させた場合,制御対象の出力は時間が経過すると一定の状態に収束する)にお いては,A/D,D/A変換での量子化誤差の影響は少ないのですが,磁気軸受けなどの 不安定な制御対象においては,その影響は大きくなるので,できるだけビット長の長い素子 を採用し,分解能を良くしなければなりません.

                                                        つづく


文責
北海道大学 情報科学研究科
技術専門職員 石川 栄一

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